あれは去年のこと――。
俺には、どうしても手に入れたいメダカが2種類あった。
無事に落札できたのはいいが、運悪く同じ日に届くことになった。
もちろん、嫁にバレてはいけない。

しかし、俺に焦りはなかった。
なぜなら、作戦は完璧だったからだ。
配達時間は遅い時間を指定し、置き配場所は玄関。
夜は滅多に玄関へ行かない嫁の習性を利用した、完璧な計画である。
準備は万端。
そして当日――。
スマホが小さく震えた。
『指定場所への配達が完了しました』
「フッ、予定通りだ……」
勝利を確信した、その瞬間。
ピンポーン!
静寂を破るインターホン。
なんと、近所から回覧板が回ってきたのだ。
そして、あろうことか玄関へ向かったのは――嫁。
(しまった……!)
脳裏を走る電撃。
絶望のカウントダウン。
玄関の外には、隠しきれないメダカの発泡箱が2つ。

「オワタ……」
男は静かに目を閉じた。
南無三。
我が人生に悔いなし。

説教という名の処刑台に上がる覚悟を決めた、その時――
嫁は何事もなかったかのように、リビングへ戻ってきた。
……おかしい。
いったい、なぜ?
不思議に思って玄関を確認すると、
荷物がねぇ!?
あるはずの発泡箱が2つとも消えているのだ。

慌てて周囲を見回すと、ふと目に入った隣の家の玄関。
あった。
隣の家に置いとるやないか〜い!
どうやら、ク◯ネコヤ◯トの配達員さんが、まさかの誤配をやらかしたらしい。
本来ならクレームもののミスである。
ところが、この時ばかりは話が違う。
心の中で叫んだね。
「サンキュー! クロ◯コ!!」

まさに怪我の功名。
こうして我が家の平和は、配達員さんのうっかりミスによって守られたのだった。
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