うちの会社のパートさんに、メダカ愛好家がいた。
……と言っても、いわゆるガチ勢ではない。
赤いメダカを何世代も愛でているタイプの平和な愛好家だ。

ヤフオクで「1匹数万円の超絶レア品種」を競り落とすような、血で血を洗う沼に浸かっている感じではない。(俺か)
でも、ちゃんとメダカを飼っている。
「へぇ〜、こんな身近にメダカ飼ってる人がおったんや」
ちょっと嬉しくなった。
だがしかし!
自分もガッツリメダカを飼っている事は、一切言っていない。
てか
会社では誰も俺がメダカを飼っていることを知らない。
なぜか?
たまに会社や仕事のことをブログのネタにしてるじゃん。
「ブラック企業め!」
とか
「あの上司がムカつく」
なんて、言えなくなる
俺の唯一のストレス発散が、無くなる
それは、辛い

と言うわけで、俺は、社内における「漆黒の隠密メダカブリーダー」として正体をひた隠しにし続けているのだ。
ところがですよ。
たまにパートさん同士で、
「メダカが死んだー😢」
「メダカ増えたから、いらん?」
なんて話をしている。
そのたびに
心の中では……
「俺も混ぜてくれぇぇぇ!」
と絶叫。
でも我慢だ。耐えるんだ俺。
ここで一歩踏み出せば、俺の「ブログの自由」が露と消える。
——そして先日。
そのパートさんが、会社を辞めてしまった。
結局、最後まで「実は俺も……」の一言は言えずじまい。
せっかく同じ職場に、メダカを愛でる仲間がいたのに。
あんなに近くにいたのに、俺は影から見つめるだけで終わってしまった。
……うん、普通にちょっと寂しい。

今になってじわじわと思うのだ。
「一回くらい、メダカ談義したら良かったな」
でもまあ……
ブログの表現の自由と平和を守り抜いたという意味では、
正体を隠し通した俺、マジで超絶グッジョブ。
いや、いったい俺は何を守っとんねん。
不器用ですから…

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